午前中に会議があり文京方面で過ごしたあと、お昼過ぎに
日本橋に到着した。
ランチ戦争のピークは過ぎているから、お店は選び放題だ。
普段混んでて入れないお店を頭に思い描く。
選んだのは
とんかつ。
日本橋三越のあるメイン
ストリートから東に歩くと程なく首都高の高架にぶつかるが、
ぶつかる路地の一本にそのお店はある。すぐそばに高架が見える。
のれん越しに店内を覗くと、お客でいっぱいだ。
入れないなか?待つのかな?
この寒空のもと外で待つのは嫌だなぁと思いつつのれんをかわし、がらがらと店の中へ。
いらっしゃい
奥さんの元気な声にたちまち迎えられる。
続けてご主人、若い衆と続く。
ほぼ満席。
四人席に相席となる。
狭くてすみませんねぇ。
と奥さん、続けてご主人。
狭い四人席に大柄な私の体を収め、ふぅと一息つく。
すると
カウンターが一席空いた。
移りますね。
と声をかけて移動する。
ちょうど入ってきた女性二人に席をあける格好になったので、お礼を言われる。
ウッシッシ。
さて、
私はこの時を待っていたのだ。
初めてのカウンター。
そこからは調理場が全て見える。
調理場は狭い。
調理器具のスペースを合わせても4畳あるだろうか?
そこにご主人と若い衆二人の計三人が入る。その狭さの中で三人は
ノンストップだ。しかもお客への気配りは忘れない。
来てくれた事への感謝。
店が狭い事への申し訳ない気持ち。
そして混んでいる故に長くなる待ち時間への申し訳ない気持ち。
カウンター越しに手渡しとなる事への申し訳ない気持ち。
態度で、そして言葉で、しかも取って着けたという風情を感じさせない物腰で、それはお客に伝えられる。
この店には既に何回か来ている。真面目な仕事をするこの店において、私はご主人のモチベーションがぐんを抜いていると思っていた。
ご主人の牽引故のこの店だと思っていた。
しかしカウンターに座ってみると、若い衆もマンザラではなかった。
マンザラどころか、みな同じベクトルで働いていた。
この店は狭い。
忙しい。
当然ミスもある。
しかし店員全員がお客に対するあるべき姿をキチンとおさえているのだろう。
遅い配膳や足らない配慮には誰からともなく指摘が入る。
しかし指摘には注意の色はなく、お客に対して最善を尽くすという思いしか感じられない。
狭い店内。
忙しない調理場。
飛び交う声。
しかし漂う空気は優しく爽やかだ。
そんな思いや雰囲気が伝わるのか、お客はみな狭い店内の中で何となく優しくなっているような気がするのだ。
そう、狭い店内で
職人の一心不乱の勢いのもと作られる真面目な優しさに、きっと取り込まれてしまうのだろう。
私の右隣は祖父祖母とその孫とおぼしき三人だった。
初めてのカウンターなのか、彼は少し緊張していた。小六か中一といったところだ。
祖母の言葉によると彼は普段食べない物を食べたらしい。
そして勘定が済み、祖父祖母に続いてお店をでるとき、彼はきちんとご主人の方を向き
ご馳走様でした。
と緊張して言った。
もちろんご主人は
ありがとうね。
と返した。
私は久しぶりに労働の正しいあり方を見た気がする。
店を出ると私は反省していた。
私は真面目に働いているのだろうか?
そして普段『仕事』というものになかなか触れた事のない我が家の小僧らに見せてやりたいと思った。
これが一つの仕事の完成形だと。
お店の名は『かつ平』。
そろそろ学校も休みに入るのかな?
社会
勉強の一つとして、
子供を連れてこういったお店に行くのもオツかも知れませんよ。
posted by とっちゃん at 14:42| 茨城

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